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北朝鮮リスクをどのように為替に織り込むか

昨今北朝鮮リスクが顕在化し、市場が動くことも多くなりました。今回は有事発生で為替がどう動くかみてみます。

 

有事発生の際の短期的な相場の動きの理由は主に2つ考えられます。まず最も可能性が高いのは、世界の投資家がリスクオフの姿勢をとり、円高が進むというものです。一般的に世界経済の見通しが良い場合は「円安」が、世界経済がリスクに直面した場合は「円高」が起こります。これは世界の金融機関のアルゴリズム(自動で為替をトレードするシステム)に組み込まれれおり、このアルゴリズムに基づいて市場は動いています。従ってこのアルゴリズムを書き換えない限り日本で何が起きようが関係なく有事が発生しリスクを減らそうと思った場合、世界の資金が円に集中し、短期的な円高機械的に進みます。


次に考えられる動きはレパトリエーションです。これは日本の金融機関が海外の資産を買い戻す動きのことで、円の資産を買うことから円高が進みます。ただし、現在日本の金融機関はもしもの場合に備えて1兆円ほどの豊富な手元資金を持っているため、莫大な損害が発生しない限りこの動きは小さい点は注意が必要です。

 

以上の2点から円高に振れる可能性は高いと予想されますが、では円安になる可能性はないのでしょうか。結論からいうとこの可能性は極めて低いです。しばしばドイツの例が出され戦後ドイツでハイパーインフレが進んだから日本も有事の際に円安が進むと言われることもありますが、ドイツは法外な賠償金支払いのために国債を大量に発行しそのようになった点を認識しなければなりません。日本が北朝鮮相手に法外な賠償金を支払う可能性はゼロだと思います。加えて、現在日本銀行による国債の直接引き受けは法律で禁止されているため、政府が意図的にインフレにし借金を返すということは現実としてできません。(それができるなら現在でもやっています)従ってインフレによる円安はありえないと言えます。
以上の点から、北朝鮮リスクは円高、と結論できます。


北朝鮮リスクがなくなることは日本にとって大きなプラスですが、軍事的手段など日本に実害が出る場合日本は短期的に円高で苦しめられることになります。外交的にこの問題が解決されることを切に願うばかりです。