日銀の金融政策は限界なのか? 残された実行可能な政策をまとめました
先日行われた金融政策決定会合で、「長短金利操作付き質的量的金融緩和」導入を発表した日本銀行。市場では金融政策の限界と受け止める投資家が多く、日銀に金融緩和の縮小を主張する投資家も現れ始めました。今回は日銀の金融政策は本当に限界なのか、日銀の残された政策についてみていきます。
基本的に、日銀の取りうる政策は以下の5つが考えられます。
①マイナス金利の適用幅拡大
③国際買い入れの拡大
④無利子永久債の発行(ヘリコプターマネーの一つ)
(⑤政府紙幣の発行(ヘリコプターマネーの一つ))
それぞれについて、詳しくみていきます。
①マイナス金利の適用幅拡大
説明:現在マイナス金利は日銀当座預金のごく一部(20兆円程度)にしか適用されていません。法定準備金を差し引いた当座預金残高は220兆円程度ですので、まだまだ適用拡大は可能で、適用を拡大すればそれだけ経済への影響は大きくなります。
メリット:日銀当座預金に眠っているお金が市場に出ることで市場のマネーの量が拡大、インフレになりうる。
デメリット:金融機関の収益には大きなマイナスなので、金融機関は大反対する。マイナス金利自体海外の例が少なく、出口戦略を含め先行研究が少ない。
②マイナス金利のふかぼり
説明:現在日銀は-0.1%の金利を適用していますが、これをさらに下げることも理論的に可能です。
メリット:金利の低下により経済を刺激
デメリット:金融機関の収益に大きなマイナスであるため金融機関が大反対。金融機関の収益悪化により信用収縮の可能性。海外での例が少ない。
③国債買い入れの拡大
説明:現在日銀は年間80兆円の国債を買い入れています。これは買いオペと呼ばれ、世界的にも買いオペは金融緩和の最も確からしい手段の一つと考えられています。この買い入れ額の拡大は、緩和をさらに強めると捉えることができます。
メリット:インフレ率の予想をより高めることが出来る。広く世界で使われている政策であるため、わかりやすい。
デメリット:市中に存在する国債は有限であり、買い入れペースを早めると買い入れ限界の期限を早めることになってしまう。
④無利子永久債の発行
説明:世界的にも導入されている国はなく、全く新しい政策。ヘリコプターマネーの一つの手段と捉えることが出来る。政府が無利子の永久債(返す必要のない国債)を発行し、それを日銀が直接引き受けることで恒久的にマネーを供給出来る。
メリット:量的緩和と財政支出の両方の効果があるため、経済へのインパクトは大きく、かつすぐに出る。
統合政府の見方に反対の人にも受け入れられやすい。
デメリット:財政政策と合わせて行う必要があるため、様々な制度変更が必要で、導入するのに時間がかかる。
返す必要はないが国債の額自体は増えるので、政府のバランスシートは拡大し、財務省が難色。
インフレ目標で制限を設けなければ、政府が乱発し、インフレがかなり昂進する可能性。
(⑤政府紙幣の発行)
説明:これは日銀ができることというよりも政府ができることという意味でカッコをつけました。かつての日本でも行われることはありました。現在は日銀のみが紙幣を発行していますが、政府も紙幣を発行するというものです。ヘリコプターマネーの一つの手段と捉えることができます。
メリット:国債の発行を伴わないため国の借金は増えない。
商品券などの形で直接国民に配布できるので、効果は大きくかつすぐに出る
デメリット:大幅な制度変更が必要であるため、導入するのに時間がかかる。
政府が紙幣を発行しすぎることで、インフレがかなり昂進する可能性もある。
ここまでまとめたことをみてみると、日本経済を刺激する政策として政府・日銀ができることはまだまだありそうです。ただ、ヘリコプターマネーなどを導入せずに現在の政策を拡大する場合、デメリットもそれなりに存在し、日銀の本気度が試されることになっていくのかもしれません。