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日経平均は二つの変数で説明できる!

経済の体温計と呼ばれる日経平均株価。様々なところで話題となる指標ですが、実は日経平均株価はある程度予想は可能です。しかも、それは二つの変数のみからおおよそ説明できます。今回は日経平均株価について、ざっくりと予想できるように説明をしていきます。

 

 まず最も大事な前提を確認しなければなりません。それは、日経平均株価東証一部上場企業のうち、225社の「平均値」である、ということです。この平均値、という前提は、結局、個々的な様々な銘柄の売り買いの「結果」であり、この指標自体を操作する、ということはできない、ということです。為替のようにそれ自体が投資の対象になるわけではなく、あくまで売買活動の結果を表す指標の一つであるわけです。従って、はっきり言って、長期的に見ると、実は株価というのは、それほど変わりません。まずはこれが前提のお話です。

 

日経平均株価は長期的にはあまり変化しないというお話をしました。ただし、現実にはもちろん日経平均株価は大きく変化していきます。その変化の要因は何か。為替です。日経平均株価において、為替はとても強い説明変数になります。

ご存じの通り、

円高⇨株安

円安⇨株高

の関係が歴然と存在し、特に為替が何円動けば株価は何円になるだろうということもしっかりとした理論があります。

(詳しく知りたい人は下の日銀資料参照)

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2013/data/rev13j08.pdf

 

そして、日経平均を決めるもう一つの説明変数もあります。それは、PERです。PERとは株価収益率のことを言いますが、これが何を意味するのかは本質的に余り意味がありません。

最も重要なことは、為替の影響を除いた日経平均株価(つまりドル建て日経平均)は、ほとんどがPER14倍〜16倍の間で取り引きされる、ということなのです。これは実は理由は余り確かなものがなく、慣習的なものではあるのですが、14倍を下回ると割安と投資家が思って株価が戻り、16倍を上回ると割高感がでて売りが出ます。これは、実は株価一つ一つの銘柄には当てはまりません。しかし、思い出して下さい。日経平均は「平均値」でしたね。個々の銘柄ではPERがかなり高いのがあったりかなり低いのがあったりしますが、平均的には大体14~16倍に収まるということです。

 

 

 

 

二つの変数、為替とPERが日経平均を大体説明できる、ということはとても重要な事実なんですが、実はこれを毎日計算してわかりやすく掲載しているサイトがあります。

nikkei225jp.com

ここで緑で表示してあるバンドは為替とPERを考慮して作られています。これをみれば大体の日経平均株価は簡単に説明できます。

 

 

そもそもPERというのは企業の利益がどれぐらいか、ということを表します。従ってここでのこれまでの議論から、日経平均を変える要因というのは、企業の利益と為替で説明できる、と言い換えることが出来ます。これは結局、海外から見た企業の利益で変わるということです。今株の多くを買っているのは外国人であるということと、本来株価というのは企業の価値の物差しである、ということを考えると、これまでずっと説明してきたことはある意味当然であると捉えることもできます。日経平均株価の説明は短期的には難しいですが、長期的にみれば至ってシンプルに説明できるのです。

 

日銀「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を読み解く

日銀は9/21、「総括的検証」をした上で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。何がどう変わったのかわかりやすく要約しました。

【現在の金融緩和について】

目標:2%の物価安定目標の実現←不変

目標達成の為の手段:
量的緩和国債ETFなどを通じマネタリーベース増やす)←不変
②マイナス金利←不変

現状の金融政策の問題点に対する対策:
量的緩和→なし←不変
②マイナス金利→金融機関の収益悪化批判に対し、イールドカーブを操作し、スプレッド(長短金 利差)を確保する政策導入←変更

目標達成時期:
できるだけ早期←(正式に)変更



となります。まとめると今回の金融政策の変更点は、金融機関に配慮して長短金利差を作るために長期金利を操作することと、目標達成の具体的時期の撤回ぐらいであるとわかります。新聞などで踊る「枠組み変更」という言葉は特に意味がなく、恐らく具体的な目標達成時期を撤回したことで高まる批判を回避するためにそう表現したと筆者は考えます。ですから今回の決定は金融緩和とは言えず、従って経済への実態的な影響もありません。ただ、今回の決定で長期金利も操作目標に加えたことは、
長期金利=短期金利+インフレ予想
の式から考えると、インフレ予想に対する日銀のコミットメントを更に強めたと捉えることもできます。



補足
この金融政策決定会合を受けて、日銀の手詰まり感が強まったと受け止める人が多く、マスコミもそのような報道を多くしていますが、資料を詳しく読むと「国債の年限を廃止する」と書かれており、永久債の発行などを行うヘリコプターマネーも今後の選択肢になり得ると読むこともでき、理論的にはまだまだ日銀の政策には実行余地があると捉えることができそうです。

経済学の大法則 フィリップス曲線を本質から理解する

私たちの身の回りのモノの値段、つまり「物価」は、マクロ経済学において重要なテーマの一つです。その理由として、経済学におけるもっとも大きな発見の一つ、フィリップス曲線があります。今回はフィリップス曲線についてみていきます。

 

フィリップス曲線とはフリップスが初めて公表した、「物価と失業率は逆相関の関係にある」という関係のことを指します。簡単に言い換えると、

 物価が上がる(インフレ)⇔失業率が下がる

 物価が下がる(デフレ) ⇔失業率が上がる

ということです。これは、どんな経済状態の国でも一般に成り立っています。

 

ですから、中央銀行を中心とする政策実務者は、国家の責務として、インフレになるように政策を決めます。なぜならインフレにすれば失業が減り、雇用が生まれるからですね。

 

このフィリップス曲線は、定量的にこの関係が正しいことがデータでしっかりと示されています。そこで次に、この関係の定性的な裏付け、つまりどういう仕組みでこの関係ができるのかについてもできる限り簡単に説明しておきます。

単純化するとフィリップス曲線の成立プロセスはこうなります。

 

物価が上がる→企業は売上高が増える→従業員の賃金はすぐには上がらないので、企業は利潤が増える→企業が積極的に雇用を増やす→失業率が改善

 

物価が下がる→企業は売上高が減る→従業員の賃金は下げられないのでリストラなどで対応→失業率が悪化

 

このプロセスの本質は、①賃金の動きは物価よりも遅い、②企業は賃金を上げることはできても下げることはできない、という点にあります。実際、①は「賃金の遅効性」、②は「賃金の下方硬直性」として知られています。

 

物価と失業率は大きな関係があることがわかりました。事実日本でも、長く続くデフレの影響で、失業率は高い水準のままでした。アベノミクスで物価がプラスになってから、失業率は劇的に改善しています。これはまさにフィリップス曲線からわかることのであり、長く続くマクロ経済学の正しさを改めて証明しているものです。ですからこれからは物価と失業率という二つの指標も見て、経済を判断していきましょう。

 

クルーグマンマクロ経済学

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