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日銀「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を読み解く

日銀は9/21、「総括的検証」をした上で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。何がどう変わったのかわかりやすく要約しました。

【現在の金融緩和について】

目標:2%の物価安定目標の実現←不変

目標達成の為の手段:
量的緩和国債ETFなどを通じマネタリーベース増やす)←不変
②マイナス金利←不変

現状の金融政策の問題点に対する対策:
量的緩和→なし←不変
②マイナス金利→金融機関の収益悪化批判に対し、イールドカーブを操作し、スプレッド(長短金 利差)を確保する政策導入←変更

目標達成時期:
できるだけ早期←(正式に)変更



となります。まとめると今回の金融政策の変更点は、金融機関に配慮して長短金利差を作るために長期金利を操作することと、目標達成の具体的時期の撤回ぐらいであるとわかります。新聞などで踊る「枠組み変更」という言葉は特に意味がなく、恐らく具体的な目標達成時期を撤回したことで高まる批判を回避するためにそう表現したと筆者は考えます。ですから今回の決定は金融緩和とは言えず、従って経済への実態的な影響もありません。ただ、今回の決定で長期金利も操作目標に加えたことは、
長期金利=短期金利+インフレ予想
の式から考えると、インフレ予想に対する日銀のコミットメントを更に強めたと捉えることもできます。



補足
この金融政策決定会合を受けて、日銀の手詰まり感が強まったと受け止める人が多く、マスコミもそのような報道を多くしていますが、資料を詳しく読むと「国債の年限を廃止する」と書かれており、永久債の発行などを行うヘリコプターマネーも今後の選択肢になり得ると読むこともでき、理論的にはまだまだ日銀の政策には実行余地があると捉えることができそうです。

経済学の大法則 フィリップス曲線を本質から理解する

私たちの身の回りのモノの値段、つまり「物価」は、マクロ経済学において重要なテーマの一つです。その理由として、経済学におけるもっとも大きな発見の一つ、フィリップス曲線があります。今回はフィリップス曲線についてみていきます。

 

フィリップス曲線とはフリップスが初めて公表した、「物価と失業率は逆相関の関係にある」という関係のことを指します。簡単に言い換えると、

 物価が上がる(インフレ)⇔失業率が下がる

 物価が下がる(デフレ) ⇔失業率が上がる

ということです。これは、どんな経済状態の国でも一般に成り立っています。

 

ですから、中央銀行を中心とする政策実務者は、国家の責務として、インフレになるように政策を決めます。なぜならインフレにすれば失業が減り、雇用が生まれるからですね。

 

このフィリップス曲線は、定量的にこの関係が正しいことがデータでしっかりと示されています。そこで次に、この関係の定性的な裏付け、つまりどういう仕組みでこの関係ができるのかについてもできる限り簡単に説明しておきます。

単純化するとフィリップス曲線の成立プロセスはこうなります。

 

物価が上がる→企業は売上高が増える→従業員の賃金はすぐには上がらないので、企業は利潤が増える→企業が積極的に雇用を増やす→失業率が改善

 

物価が下がる→企業は売上高が減る→従業員の賃金は下げられないのでリストラなどで対応→失業率が悪化

 

このプロセスの本質は、①賃金の動きは物価よりも遅い、②企業は賃金を上げることはできても下げることはできない、という点にあります。実際、①は「賃金の遅効性」、②は「賃金の下方硬直性」として知られています。

 

物価と失業率は大きな関係があることがわかりました。事実日本でも、長く続くデフレの影響で、失業率は高い水準のままでした。アベノミクスで物価がプラスになってから、失業率は劇的に改善しています。これはまさにフィリップス曲線からわかることのであり、長く続くマクロ経済学の正しさを改めて証明しているものです。ですからこれからは物価と失業率という二つの指標も見て、経済を判断していきましょう。

 

クルーグマンマクロ経済学

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